何日でないと便秘?

毎日排便できていれば健康な状態ですが、3日以上便が出ない場合は便秘となります。その他、残便感を覚える状態、硬い便やコロコロした便が出る状態も便秘に該当します。便秘は女性に起こりやすい症状です。
便が出ないために腹部膨満感や腹痛が生じ、肌荒れや肩こり、食欲不振などの症状を伴うことがあります。便秘薬によって治療しますが、その種類は様々あり、各患者様に適した薬を使用します。
便秘の種類
機能性便秘
弛緩性便秘
弛緩性便秘は、腸管の緊張が緩み、蠕動運動が低下することで起こります。便秘のうち最も起こりやすいタイプで、女性や高齢者によく認められます。蠕動運動が弱まることにより、便が長時間腸内に留まり、便中の水分が吸収されて硬い便となります。
原因には、過度なダイエットや食物繊維不足、水分不足、運動不足、腹筋力の低下などが挙げられます。弛緩性便秘では、残便感や腹部膨満感に伴って食欲低下や肌荒れ、イライラ、肩こりなどの症状が現れます。
けいれん性便秘
けいれん性便秘は、環境変化やストレスなどにより自律神経が乱れ、副交感神経が過剰な状態となり、腸管の一部がけいれんして起こります。便はウサギの糞のように小さくコロコロした状態となります。便秘に加えて下痢も起こりやすく、残便感や食後の下部腹痛などの症状を示すこともあります。過敏性腸症候群(IBS)によって起こることもあります。
直腸性便秘
直腸の感度が低下して便意を感じにくくなり、直腸に便が溜まる状態です。羞恥心や痔による痛みから排便を何度も我慢していると起こります。また、寝たきりで排便が困難な方や便意を感じにくくなる高齢者にも多いです。
器質性便秘
腸管癒着や腸閉塞、大腸がんなどにより便の通路が狭くなることで起こります。便秘に伴って、激しい腹痛や嘔吐、血便などの症状が起きていれば、すぐに当院までご相談ください。患者様の判断で下剤を使用した場合、腸管穿孔を起こす恐れがあるため注意が必要です。
便秘の原因
便が直腸に滞ってしまう
直腸に便が滞留することで排便が困難となります。通常、直腸に便が一定溜まると便意を催しますが、直腸の感度が低下していると便意を感じにくくなります。
大腸の運動機能が低下する
大腸内で便が滞留している状態で、便中の水分が吸収されるため硬い便となります。腸管の緊張が緩み、蠕動運動が弱まることで起こります。
大腸が過剰に緊張する
便がウサギの糞のように小さくコロコロした状態となります。自律神経が乱れ、副交感神経の働きが過剰になり腸管の一部がけいれんすることで起こります。
薬による影響
薬の副作用により腸機能が低下し、便秘になることがあります。便秘を引き起こす可能性がある薬には、胃薬や利尿薬、循環器作用薬、貧血の治療薬などが挙げられます。薬を飲まれてから便秘が持続している場合、一度当院までご相談ください。
便秘を引き起こす可能性がある主な薬
高血圧 | 利尿剤、循環器作動薬 |
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貧血 | 鉄剤 |
消化器疾患 | 制酸薬、抗コリン薬 |
精神疾患 | 向精神薬 |
パーキンソン病 | 抗パーキンソン病薬 |
がん | オピオイド、抗がん剤、制吐薬 |
その他 | 循環器作動薬、下痢止め |
便秘から考えられる病気
過敏性腸症候群(IBS)
過敏性腸症候群は、腸の機能が障害された状態です。腹痛に伴って、便秘や下痢などの便通異常が長期間続きます。発症にはストレスが影響しているのではないかといわれています。
腸閉塞症(イレウス)
腸の機能障害や腸捻転などにより腸管が閉塞し、内容物が詰まる状態です。腹部膨満感や腹痛、便秘などの症状が起こります。
大腸がん
大腸がんが大きくなり大腸が狭くなった場合、排便に支障をきたします。大腸がんは初期では自覚症状が乏しいですが、進行すると細い便や血便が出たり、便秘になったりします。
便秘解消のためには
どうすればいい?
便秘解消に良い食べ物
食物繊維

食物繊維は小腸では消化・分解されず、大腸まで運ばれます。血糖値の上昇を抑える作用や血中のコレステロールを低下させる作用があり、さらに便秘の解消・予防に役立ちます。
大半の日本人は食物繊維の摂取量が不足しているといわれているため、意識して摂取しましょう。
食物繊維は便の水分量を増やして柔らかくする水溶性食物繊維と、便のカサを増やす不溶性食物繊維に分けられます。なお、不溶性食物繊維は過剰摂取すると便秘の悪化に繋がる可能性があるため、バランス良く摂取しましょう。
水溶性食物繊維
水に溶けやすい性質があり、善玉菌が摂取して腸内環境の改善が見込めます。また、便を柔らかくしたり糖の吸収を緩やかにしたりします。ネバネバ・サラサラとした食べ物に豊富に含まれており、キャベツや海藻類、大根、果物、いも類など積極的に食べましょう。
不溶性食物繊維
水に溶けにくく、便のカサを増やして大腸を刺激し、排便を促します。なお、腸機能が弱まっている場合、不溶性食物繊維を摂取すると便秘が悪化する恐れがあるため摂取を控えましょう。食物繊維をたくさん含む食べ物を摂っているのに腹部に張り感を覚える場合、食習慣の見直しをお勧めします。不溶性食物繊維を豊富に含む食品は、穀物(玄米、麦など)やごぼう、きのこ、大豆などです。
乳酸菌
乳酸菌は善玉菌の一種で体内にも存在しており、ヨーグルトや納豆などの発酵食品にも含まれます。腸内環境を整える作用があるため、便秘にお悩みの方は発酵食品を食べることをお勧めします。乳酸菌は長期間腸内に存在できないため、便秘を解消するには日頃から継続的に発酵食品を食べることが大切です。
オリゴ糖
オリゴ糖は消化酵素ではほとんど分解されず、大腸まで運ばれ善玉菌の餌になります。善玉菌が増えることにより、腸管環境を良い状態に維持でき、便秘の改善にも効果的です。また、血糖値の上昇を抑える効果もあります。
オリゴ糖を含む食べ物は、はちみつ、バナナ、リンゴ、玉ねぎなどがあり、市販の甘味料や特定保健用食品にも含まれています。なお、下痢を引き起こすことが稀にあるため、過剰摂取は控え少量ずつ摂りましょう。
脂質
ダイエットの一環として脂質を含む食品を控える方がいますが、排便を促す効果があるため、全く摂らないでいると便秘を招く可能性があります。なお、脂質を含む食べ物は高カロリーなものが多いため、摂取は適量に留めましょう。
便秘解消に良い飲み物
水
便秘は上記のように食べ物によって解消が期待できますが、水分をしっかり摂ることも大切です。水分を摂取することで胃腸が刺激され、便が柔らかくなり便が出やすくなります。朝起きたらコップ1杯ほどの水を飲みましょう。便秘が持続している場合はいつも以上に水分を摂るようにしてください。
お茶
お茶は食物繊維を含んでいるため、便秘の解消が見込まれます。特にノンカフェインのハーブティーや玄米茶がお勧めです。なお、カフェインは利尿作用があるため、適量に留めましょう。
ココア
ココアにはカカオリグニンという不溶性食物繊維が含まれています。小腸で消化・分解されずに大腸まで運ばれ、便のカサが増えるので排便が促されます。なお、ココアは糖分も含んでいるため、飲み過ぎないようにしましょう。
甘酒
甘酒にはオリゴ糖や難消化性たんぱく質が含まれており、これらは善玉菌の餌となります。そのため、健康維持や美容効果が見込まれます。難消化性たんぱく質は食物繊維と似た働きがあります。
どうしても便が出そうで出ない…出す方法は?
便秘では強くいきまないと排便できませんが、排便できても硬い便が排泄されます。便秘薬は様々な種類がありますが、酸化マグネシウムを最初に試すことをお勧めします。酸化マグネシウムは便秘を柔らかくする効果に加え、腹痛が発生しにくく、癖になりにくい特徴があります。なお、長期にわたり服用していると薬を飲まないと排便が困難になることがあるため、医師から指示があった用法・容量にしたがって服用しましょう。また、効果を実感できない場合や体調が悪くなった場合は、服用をすぐに中断し、当院までご相談ください。
通常、消化された食物は蠕動運動により直腸まで送られ、一定程度溜まると直腸壁が刺激されて便意を催します。しかし、排便を我慢していると直腸の感度が低下して便意を催しにくくなり、直腸内に便が留まって硬くなってしまいます。そのため、便意を催したらすぐにトイレに行くことを習慣づけましょう。特に朝食後は蠕動運動が活発で、排便がスムーズに行える状態のため、朝食後はトイレに行くことを意識しましょう。